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#編集者インタビュー

ポーランドドヴィエ・ショストラ出版社
Wydawnictwo Dwie Siostry

2006年から「遊びを通しての教育」をスローガンとして、幼児からティーンエイジャーまでを対象とする本を出版。ポーランドの古典児童書の復刊から、世界各国の新作絵本の翻訳出版まで、最高レベルのテキストとグラフィックを融合させた本作りで、国内外から高い評価を得ています。国際児童図書評議会(IBBY)児童図書賞、ボローニャ国際児童図書賞など国内外で多くの賞を受賞。

WEBサイト

国際交流基金助成実績

2020
岩佐めぐみ(絵:高畠純)『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』

ポーランドで子どもたちに人気のあるイョルク・ミューレ氏のイラストとともに、シリーズ全巻を翻訳予定

ユスティナ・カルピンスカ(Justyna Karpinska)
海外版権担当

ユスティナ・カルピンスカさんの写真

毎年多くの児童書を出版されています。翻訳作品が多いのでしょうか。

料理本や大人向けの絵本、古典文学も扱っていますが、会社設立時からずっと、メインに扱っているのは児童書です。また、ポーランド語の作品も扱いますが、翻訳作品を多く扱っているのが私たちの特徴で、全体の約4分の3を翻訳作品が占めています。日本の作品はこれまでに2冊翻訳出版しています。

弊社の設立者はもともと、ポーランドの市場には児童書に質の高いものが少ないと感じていたようです。もっとクラシックで伝統的なものや、質の良いものが必要だと考えていました。また、当時、ポーランドの出版界には二つの大きな動きがありました 。一つは、すでに出版されなくなり、人々から忘れ去られてしまったポーランドのクラシックな作品を復活させる動きです。例えば、1960年代に国内でイラストレーターが盛んに活動していた時期があり、その時代の作品などを出版し直して復活させる動きがありました。もう一つは、これまでポーランドに紹介されてこなかった、世界的に有名な作品を紹介していこうという動きです。
この二つの動きと設立者の思いを実現させる場として、2006年に弊社が誕生しました。

表紙の画像

岩佐めぐみ『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』のポーランド語版
絵:イョルク ミューレ

画像

岩佐めぐみ『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』のポーランド語版
絵:イョルク ミューレ

『ぼくはアフリカにすむキリンといいます』(以下『キリン』)は、2018年にドイツ日本文学賞を受賞した作品ですが、この作品に出 会ったきっかけや翻訳、出版までのことを教えてください。

『キリン』は、イラストレーターの作品情報で初めて知りました。この本のドイツ語版のイラストを担当していたのが、ポーランドでも人気がある、ドイツ人のイョルク・ミューレ 氏だったのです。

日本の出版社やエージェンシーとも常に良い関係を保てており、スムーズに仕事をすることができました。『キリン』のポーランド語翻訳者は、日本研究者であり、日本語と日本文化をよくわかっているアンナ・ザレウスカ氏です。いったん別言語に訳されたものから重訳する手順は踏まず、日本語から直接ポーランド語に訳しました。日本の文学作品はポーランドで人気が出てきていますので、今後は翻訳者を探すのに苦労することもあるかもしれません。

ポーランド語版のイラストはドイツ語版と同じイラストですね。

児童書において、イラストは非常に大事なので、慎重に検討します。『キリン』については、オリジナルの日本語版のイラストもすごく好きだったのですが、この作品を知るきっかけとなったドイツ語版のイラストレーターがポーランドでも人気のある方で、彼のイラストを使うことによって読者に親しみやすく、よりよく売れるであろうと考えました。実際、子どもたちにも大変人気がありました。
最初に手掛けた日本の絵本『ちいさなおうさま』(三浦太郎作)では元の日本語版のイラストを使っています。

表紙の画像

表紙の画像

三浦太郎『ちいさなおうさま』のポーランド語版

『キリン』の読者からの反応はいかがでしたか。イベントも開催されたとお聞きしました。

ポーランドでは多様な国の作品が出版されているので、日本の児童書が翻訳出版されたこと自体は、ポーランドの読者にはごく自然に受け入れられたと思います。

本に関連するイベントは常にいろいろと開催しています。例えば図書館で働いている方々、それから教師の方々向けに「こういう本があります。」「こういった本と子どもたちとどう関わりあっていけたらよいか」という内容でプログラムを実施することもありますし、オンラインイベントや、市内にある書店でイベントをすることもあります。

『キリン』に関しては、子ども向けのイベントを開催しました。この本を読んだ後に、姿の分からない未知のお友達に手紙を書いてみましょうというものです。この本は子どもたちの反応も良く、ウィットに富んだ非常に楽しい作品です。私たちはこのシリーズの全6作品を翻訳出版したいと考えています。現在2作目を手掛けているところです。

今後、実現したいことはありますか。

この本に限らず、出版をした際には、作家をポーランドに招待できれば良いと思います。過去には、クラクフで開催されるブックフェア等に作家の方々に参加いただき、子どもたちと実際に交流して頂いたり、滞在期間中にいろいろなインタビューを受けていただいたりしたことがありました。作家と読者の交流は非常に重要です。作家の方々に、インタビューや子どもたちとの交流、サイン会、講演会など、さまざまなイベントに参加していただけたら、本当に良い機会になると思います。

ポーランドにはもともと本や文学を大事にする国民性がありますが、ここ10年で本に対する考え方が少し変わってきて、人々がより質の高い本を求めているのを感じています。出版社の規模に関係なく、丁寧に作られた本を大事にする傾向が出てきているのです。私たちもその要望に応えられるよう、今後もより丁寧な作品づくりに取り組み、日本の作品を含め、もっと多様で良質な作品をポーランドに広めていきたいと考えています。

(インタビュー収録:2022年2月15日)/敬称略
写真提供:Wydawnictwo Dwie Siostry

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