日本の文学や出版事情を知るために
ライモンド・ワゲンシュタイン(Raymond Wagenstein)
社長

ブルガリアで多くの日本図書出版の実績をもつ出版社
1990年創立のコリブリ出版は、フィクションだけでなく、ノンフィクションや児童書も扱うブルガリアの出版社。コリブリ出版社からの参加者は、社長のライモンド・ワゲンシュタインさんです。自社について、「文学への無条件の愛と、妥協のないプロフェッショナリズム、そして顧客やパートナーへの責任あるアプローチなどによって評判を得て、ブルガリアの出版界を代表する存在になっています」と紹介します。
ブルガリアでは、日本の図書は女性の読者に特に人気だそうです。そして、村上春樹作品が最も人気が高いということですが、コリブリ出版ではその他の作家の作品も多く手掛けています。川口俊和著『コーヒーが冷めないうちに』、川上未映子著『夏物語』、村田沙耶香著『コンビニ人間』、有川浩著『旅猫レポート』等、既に多くの日本の図書を翻訳出版した実績があります。
作品を通して日本とのつながりのあったワゲンシュタインさんですが、日本を訪れるのは今回が初めて。日本へ出発する前に「日本の文学や出版について、できるだけ多くのことを学びたいと思っています」と語っていました。
川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』ブルガリア語版
川上未映子『夏物語』ブルガリア語版
村田沙耶香『コンビニ人間』ブルガリア語版
有川浩『旅猫レポート』ブルガリア語版
印象に残った日本文学や出版に関するレクチャー
日本では、東京・京都・大阪の3都市を訪問しましたが、出版社や書店、図書館を訪れ、日本の書籍出版や書籍流通のシステムについての講義を受けたこと、日本の歴史や文化についても学べたこと、また日本の様々な出版社や文芸エージェントとミーティングや顔合わせを行ったことがとても有益だったと話します。「非常に内容の濃い有益なプログラム(2023年度中東欧地域編集者グループ招へい事業)だったと思います。スタッフもとても親切で有能、通訳もとても適切でした。参加メンバー全員が、国際交流基金のイニシアチブに非常に好意的な意見を持ったと思います」と高く評価しました。
中でも、プログラムの序盤に受けた、現代の日本文学を概観するレクチャーや、出版と流通の全体像について紹介したレクチャーなどが「最も印象深く記憶に残った」そうです。

日本の出版社とのネットワーキング交流会にて
これからブルガリアで紹介したい作品
プログラムに参加した後、ワゲンシュタインさんは川村元気著『世界から猫が消えたなら』、村上春樹著『街とその不確かな壁』、村田沙耶香著『地球星人』に関心をもち、現在、ブルガリアでの出版を計画しているそうです。「今回のプログラムで得た情報や資料を参考にして、編集委員会でさらに詳しく検討して、今後の翻訳・出版について考えていきたい」と、今後の展開も楽しみにしています。