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#中東欧編集者招へい2024

クロアチアネルミナ・フスコヴィッチ / ヘナコム出版
Nermina Husković / Hena com

WEBサイト

クロアチアに合う日本の作家の発掘を確信

ネルミナ・フスコヴィッチ(Nermina Husković)
編集長

ネルミナ・フスコヴィッチさんの写真

母国での課題に大いに示唆を与えてくれたプログラム

クロアチアの出版社ヘナコムは、国内外の注目すべき作家や受賞歴のある作家による文学作品を出版しています。今回のプログラム(2023年度中東欧地域編集者グループ招へい事業)に参加したネルミナ・フスコヴィッチさんは外国文学を担当する編集者で、アジアの小説、中でも韓国の小説に多く携わってきました。

 

日本の作品は、小川洋子著『博士の愛した数式』を翻訳出版したのみでしたが、「日本の作家や作品についての見識を深めるために、出版社やエージェントと交流したい」という思いがあり、今回のプログラムに参加してくれました。

『博士の愛した数式』の書影

小川洋子『博士の愛した数式』クロアチア語版

フスコヴィッチさんは「クロアチアでは、言語によっては翻訳者が十分にいないこと、アングロサクソン文学への人気の偏り、初版部数の少なさ、読書文化がまだまだ成熟していないことといった課題があります。今回の滞在プログラムを通じて、出版社、書店、翻訳者、作家、出版業界や出版制度等、日本の出版文化全体にふれたことは非常に興味深く、多くの気付きを与えてくれました」と感想を寄せました。チェコを中心とする中東欧文学を専門とする東京大学の阿部賢一先生からは、チェコ文学を日本で翻訳出版する自身の経験をふまえたレクチャーがありましたが、いわゆる“小”言語であるクロアチア語の出版に携わるフスコヴィッチさんにとって、このレクチャーは「話者の少ない言語からの翻訳や出版に関する貴重な洞察を与えてくれた」そうです。さらに印象に残ったものとして、早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)での辛島デイヴィッド先生、作家の小野正嗣先生とのディスカッション、同ライブラリーの村上春樹作品の翻訳書のコレクションに圧倒されたことなどを挙げました。また、出版社を訪問し、日本の大手出版社が書籍と雑誌の両方を扱っている点(クロアチアでは同じ出版社が両方を扱うことはない)も、驚いたことのひとつだと語ってくれました。

盛りだくさんで感動的な東京、京都の訪問

プログラム全般を高く評価したフスコヴィッチさん。東京と京都で用意された市内視察についても満足したと目を輝かせます。「たとえバスの車窓からであったとしても、皇居を見ることができてよかったです。東京スカイツリーに登ったことは、私にとって旅のハイライト。本当に印象的で、東京のスカイライン全体を見渡す眺めは壮観でした。また鉄道事情があまり芳しくない国から来た私にとって、新幹線を使って京都に行く機会があったことはとても嬉しく、本当に魅力的でした。京都では初めてお茶会に参加しました。細部にまで気を配った作法にはおもてなしの心があふれていて、日本古来の伝統文化を体験できたことに感動しました。また美しく静かな環境にある金閣寺を見学できたのも素晴らしかったですね」と話しました。

ネルミナ・フスコヴィッチさんの写真

東京スカイツリーにて

クロアチアに合った日本の作品の発掘に期待

現在、ヘナコムではアジア文学のコレクションを充実させるべく、出版作品を増やすことを検討しています。今回のプログラムの前に、ドリアン助川著の『あん』の翻訳出版について既に契約を結んでいましたが、そのエージェントに実際に会えたことも大変有意義だったそうです。「日本の出版社やエージェント数社とネットワーキングを行い、各出版社が現在取り組んでいる内容や、海外市場での翻訳・出版に関心が持たれそうな作家やタイトルを紹介してもらいました」とフスコヴィッチさん。クロアチアの市場やヘナコムのラインアップに合った作家を見つけるべく、提供されたすべての資料を注意深く検討しているそうです。「クロアチアには日本文学に関心のある人たちがいて、日本人作家の本を喜んで読んでいます。日本人作家の作品には興味深い物語があり、日本の文化、伝統、歴史を知ることができます。そればかりでなく、社会の変化や近代の重圧が、一人一人の人間、家族、更に広いコミュニティに描き出された現代小説も多く、それは普遍的な価値を持つでしょう。これからもっと多くの日本文学を紹介していきたいと考えています」と今後の意気込みを話してくれました。

ネルミナ・フスコヴィッチさんの写真

日本の出版社とのネットワーキング交流会にて

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