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#中東欧編集者招へい2024

北マケドニアボヤン・サズドフ / TRIパブリッシング・センター
Bojan Sazdov / TRI Publishing Centre

WEBサイト

北マケドニアで日本文学の翻訳出版拡充を目指して

ボヤン・サズドフ(Bojan Sazdov)
編集長

ボヤン・サズドフさんの写真

日本文学の翻訳出版を牽引するTRI

北マケドニア共和国は、バルカン半島の南部に位置し、ギリシャ、ブルガリア、アルバニア、セルビア、コソボに囲まれた内陸国。TRIパブリッシング・センター(以下、TRI)は、1999年の設立以来、優れた世界の書籍を翻訳出版してきた、北マケドニアの出版社です。日本文学では、夏目漱石や芥川龍之介といった近代文学から、村上春樹、川口俊和、吉本ばなななどの現代作家まで幅広く出版しており、北マケドニアで日本文学といえばTRIの書籍が参照されるほどです。

ボヤン・サズドフさんは、TRIで20年近く編集長を務め、異なるジャンルとテーマの500以上の図書の編集に携わってきました。「TRIの日本文学のラインナップが充実しているのは、私の日本に対する思い入れの強さの表れかもしれないです」と話すサズドフさん。「今、世界では日本文学の“波”が起きています。TRIも今後2年以内に日本の作品を拡充したいと考えていますし、北マケドニアでは過小評価されてしまっているマンガにも関心があります」と来日前に語っていました。

表紙の画像

村上春樹『職業としての小説家』マケドニア語版

表紙の画像

青山美智子『お探し物は図書室まで』マケドニア語版

愛好家としても満足した、村上春樹ライブラリー

このプログラム(2023年度中東欧地域編集者グループ招へい事業)に参加し、初めて日本を訪れたサズドフさんは、日本滞在を振り返り、「日本の文学や出版業界を知る上で、些細なことも含め全てが役に立ちました」と称賛しました。東京大学の阿部賢一先生が、講義以外の場でも心を開いて参加者と話しをしてくださったことは、深く思い出に残っていることのひとつだそうです。そして、サズドフさんが敬愛する作家・村上春樹のライブラリー(早稲田大学国際文学館)を訪れたことは特に忘れ得ぬ体験だったと言います。

「村上文学の愛好家にとって聖地ともいえる場所です。そこで、辛島デイヴィッド先生と小野正嗣先生に迎えて頂き、彼らと日本文学をめぐってディスカッションをしたことは、本当に貴重な体験でした。その空間で過ごした数時間を、私は折に触れて周囲に語り、喜びとともに振り返っています」と熱く話してくれました。「愛読する文学作品の舞台となった地域を訪れたり、多くの日本の小説に共通する独特の雰囲気を体験したりすることは、非常に刺激的で、深い満足感を得られました。それは、本を読むことそのものと同じくらい特別な体験です。文学は、文化を知り、経験するひとつの方法ですが、実際に体験できる機会があれば、その経験はかけがえのないものとなります」と話します。

その他、日本の大手出版社を訪問し編集者の方々から助言を得たことも、編集者であるサズドフさんにとって貴重な交流だったそうです。また、日本書籍出版協会の樋口清一専務理事による講義を通じて、日本の出版業界の制度について情報を得たことも、大変有意義だったとのこと。サズドフさんは、マケドニア出版協会の会長も務めているので、日本の出版業界のことを北マケドニアの出版社にも伝えたい、と話しました。

ボヤン・サズドフさんの写真

早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)にて

ボヤン・サズドフさんの写真

早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)にて

日本文学には世界が読むべき独自性ある

サズドフさんは、帰国後、日本の出版社から寄せられた沢山の提案や推薦を検討しているそうです。中でも、特にまだ北マケドニアでは紹介されていない、村田沙耶香と川上未映子の2人の作家に注目し、すでに作品を出版することを決定したとのこと。「今後は、このプログラムに参加させてもらった感謝の気持ちを具体的に行動で示したいと考えています。日本の作家の作品を出版することや、日本文学の普及を目的としたイベントを行うことで、公的にも私的にも、私の国で日本文化を紹介していきたい。日本にはそれだけの価値がありますし、日本文学には世界が読むべき独自性があります」と意気込みを語りました。

2024年に日本との国交樹立30周年を迎えた北マケドニア。サズドフさんのように日本の文化や文学を愛する人たちの手によって出版される書籍により、今後さらに多くの日本ファンが北マケドニアに生まれることでしょう。

表紙の画像

村田沙耶香『コンビニ人間』マケドニア語版

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