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#中東欧編集者招へい2024

ハンガリーバラージュ・エヴァ / ゲオペン出版
Balázs Éva / Geopen Könyvkiadó

WEBサイト

村上春樹に並ぶ、新たな作家を求めて

バラージュ・エヴァ(Balázs Éva)
編集長兼責任編集者、文芸翻訳者

バラージュ・エヴァさんの写真

中間言語を通さず、日本語からの翻訳体制が整っているハンガリー

ゲオペンは1996年に設立されたハンガリーの出版社です。世界各国の文学作品のほか、教育書、ガストロノミー関連や社会政策に関する書籍まで幅広いジャンルの本を出版しており、近年は児童書やヤング・アダルトのジャンルにも取り組んでいます。

日本の翻訳書に関しては、村上春樹の作品を中心に出版してきました。編集長兼責任編集者、文芸翻訳者として、これまで日本の書籍の翻訳と出版に数多く携わってきたバラージュ・エヴァさんは、ハンガリーにおける日本文学についてこう説明します。

「ハンガリーでは、20世紀初頭から日本文学に注目してきました。当時、いわゆる“西欧諸国”が、遠く離れた日本の文化や芸術、とりわけ伝統、歴史に強い関心を寄せていたことの影響を受け、『源氏物語』などの古典文学や古典詩、俳句がハンガリー語に翻訳されました。ただ、1960-70年代になってもハンガリーでは日本語を勉強する人は極めて少なく、文芸翻訳の高いレベルに達する人はほとんどいませんでした。ですので、当時は英語やドイツ語からの重訳がほとんどでした。今では状況が異なり、日本語を使う人が増え、日本語翻訳者を選べるようにまでなっています。ゲオペンは2005年以来、村上春樹のハンガリーにおける出版権を取得しており、彼の作品はすべて日本語から翻訳されています」。

表紙の写真

村上春樹の作品のハンガリー語版

日本の出版事情について理解を深めることができた

今回の来日(2023年度中東欧地域編集者グループ招へい事業)について、まず、滞在最初に聞いた日本文学に関するレクチャーが良かったと話します。「チェコ文学の翻訳者でもある阿部賢一先生の講演は示唆に富むものでした。外国文学を出版する際にどの本を選ぶのかは非常に難しいです。日本の書籍市場で売れていればよいというものでもありません。阿部先生は、選書する際にはカバーや序文といったパラテクストも参考にすること、ターゲット・グループをどのように考えるかという点、また、出版のタイミングやプロモーション、文芸翻訳の助成金などの現実的な側面についても触れてくれました。国内で受賞し、成功を収めた著名な現代作家について知ることもできましたし、文学賞の受賞歴を考慮すべきというアドバイスも参考になりました」と話してくれました。村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)や国際交流基金ライブラリー、京都国際マンガミュージアムへの訪問も、「興味深く、重要な出版物を目にすることができ、彩り豊かな良い経験となった」と高く評価しています。
一方で「欲を言えば、日本の出版社の方々と議論する非公式の場がもっとあればさらによかった。日本の作品の版権に関する情報を得るための時間ももう少し欲しかったです」とコメントしました。

バラージュ・エヴァさんの写真

早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)にて

バラージュ・エヴァさんの写真

日本の出版社とのネットワーキング交流会にて

ハンガリーでの日本作品の強化に向けて

今後のハンガリーでの日本書籍の出版予定について、バラージュさんは「時間は少しかかるだろう」としながらも、「ハンガリー市場において日本作品のプレゼンスを高めるために、文学系の作家を1、2人選びたいと考えており、今回出会った出版社の方々にリストを依頼したところです。ハンガリーの読者に紹介できるような新たな日本人作家を見つけたいと願っていますし、見つけられると信じています」としています。特に、川上未映子の『夏物語』に関心をもったそうです。

プログラムを振り返り、「小規模の出版社の人たちと話し、彼らの作品に対する思いを知ることは、間違いなくこのプログラムで最も有益でインタラクティブな出来事でした。このような出会いをきっかけに、海外の編集者と日本の編集者は直にコンタクトを取り、個人的な関係を発展させることができれば、日本の書籍はもっと多くの国に届くようになるでしょう。もうひとつ、同じ志を持った中東欧の出版社の人たちとの出会いも、このプログラムの貴重な財産になりました。今後日本の作家たちを中東欧で広めるために大きな効果をもたらすかもしれません」と今後の展開に期待を込めました。

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