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#中東欧編集者招へい2024

スロバキアダリナ・ザイツォヴァー / スロバルト出版社
Darina Zaicova / SLOVART

WEBサイト

スロバキアで多様な日本の文学の翻訳出版に向けて

ダリナ・ザイツォヴァー(Darina Zaicova)
翻訳小説編集者

ダリナ・ザイツォヴァーさんの写真

翻訳者不足が一番の障壁

1991年に創業したスロバルトは、スロバキアで2番目に大きな出版社です。国内外の古典、現代小説、SF、ファンタジーなどさまざまな文学ジャンルのほか、美術、写真、建築、グラフィックデザイン、インテリアデザインなどの書籍も手掛けています。翻訳図書についても年間30〜40冊ほど出版しており、ダリナ・ザイツォヴァーさんはその編集者として17年間勤務。歴史小説やファンタジー、犯罪小説など、成人向けの多彩な文学ジャンル、そして様々な言語の翻訳タイトルを手がけています。ザイツォヴァーさんは、本の選定プロセスから関わり、海外の出版社はもちろん、翻訳者の方々とも密に連絡をとりながら仕事をしているそうです。

村上春樹の作品のうち4タイトルを担当したザイツォヴァーさん。これからも村上春樹作品の出版は続けていくそうですが、「村上作品を全タイトル出版するには、まだ少し時間がかかる」と語ります。その大きな理由のひとつが翻訳者不足です。今、一緒に働いている日本語からの翻訳者は一人しかいないため、多くのタイトルを翻訳するには時間がかかるからです。「スロバキアは、日本文学の出版に大きな可能性を秘めている国だと思います。読者は日本文学に関心を持っていますが、翻訳者が不足しているため、出版社も読者も、新しい作品が翻訳されるまで辛抱強く待たなくてはいけません。翻訳者不足が日本の文学作品をスロバキアに紹介する上で大きな障壁となっていると感じています」と、日本の作品の翻訳出版の課題について述べています。

表紙の画像

村上春樹『羊をめぐる冒険』スロバキア語版

表紙の画像

村上春樹『象の消滅』スロバキア語版

表紙の画像

村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』スロバキア語版

表紙の画像

村上春樹『1973年のピンボール』スロバキア語版

表紙の画像

村上春樹『めくらやなぎと眠る女』スロバキア語版

表紙の画像

表紙の画像

表紙の画像

村上春樹『ねじまき鳥クロニクル1、2、3』スロバキア語版

築かれた参加者同士のネットワーク

10日間の日本での滞在で、日本の出版を様々な角度から見ることができた、とザイツォヴァーさんは言います。日本の出版社とのミーティング、出版制度に関する講義、書店訪問、そして日本文学を概観する講義や海外で日本文学を出版するための助成金プログラムの紹介など、幅広い内容で、「今回のプログラム(2023年度中東欧地域編集者グループ招へい事業)で最も印象に残った内容をどれかひとつ挙げるのは難しいですね」と振り返ります。「日本の出版社を内側から見ることができたこと、編集者の方々と直接会って、彼らの日常や現在手がけている書籍について話を聞くことができたことは、とても有意義でした。また、さまざまな書籍を目にし、それらに触れることができたことも素晴らしい体験となりました。講演と各講演後の質疑応答で、講師や他の参加者と意見を交換することができたことも良かったです。そして、今回のプログラムは、参加者と日本の出版関係者とを結びつけただけではなく、参加者同士の情報共有、例えば各国の書籍市場や出版における日常的な苦労などを話し合える場にもなりました。新たに築かれたこのつながりは、友情となって今後も継続していくことでしょう。」と嬉しそうに話してくれました。

ダリナ・ザイツォヴァーさんの写真

八坂庚申堂にて

ダリナ・ザイツォヴァーさんの写真

講談社にて

新しい作家の翻訳出版を検討

帰国後、ザイツォヴァーさんは在スロバキアの日本大使館の方々と面会したり、日本語からスロバキア語への翻訳者の方と話したりしながら、村上春樹以外の日本の作家の小説を紹介することを検討中だそうです。

今回の日本訪問で巡り合った作品、紹介を受けた作家の中から、ザイツォヴァーさんが自社のポートフォリオに照らし合わせて関心をもったのは、小川洋子、村田沙耶香、彩瀬まる、凪良ゆう、朝井まかて、桜庭一樹等。さらにザイツォヴァーさんが心に留めているもう一人の作家についても明かしてくれました。「吉本ばななは『TUGUMI』を読んで以来、長い間、敬愛している作家です。私の心の中のリストに、改めて吉本ばななさんの名前を書き加えました」。

「文学とは、異なる世界や文化を結ぶ架け橋となるものです。将来は、より多くの日本の文学作品を出版していきたいと考えています」と、日本の作品を出版する決意を新たにしました。

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